2021年12月15日からジャンプ+で連載が開始された漫画『エクソシストを堕とせない』
ハードな設定やグロテスクな描写等、人を選ぶ要素もありますが、聖書や七つの大罪を取り入れた世界観、迫力あるバトルシーンや、可愛らしいデザインと裏腹に重い過去を背負うキャラたちの描写が魅力の作品です。
2022年には 『次にくるマンガ大賞 2022年』にて9位にノミネートされました。
本記事はストーリー上、重要なネタバレ(第二話時点)を含むのでご注意ください!
神に選ばれし少年は、最強のエクソシストとして魔王たちと死闘を繰り広げていた。人類の命運を背負いつつも本当は静かにお菓子作りをしていたい、そんな彼に訪れた一人の少女との出会い…。これは壮絶な聖戦の中で芽吹いた、恋と希望の物語。
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496649675685
『エクソシストを堕とせない』の世界は私たちが住んでいる世界とよく似ています。しかし、恐ろしい力を持つ悪魔たちに侵略を受けており、神への信仰を魔力に代え戦う聖職者たちが悪魔たちに対抗しています。この世界における教会は悪魔たちに対抗する総本山なのです。
主人公の少年神父(※未だ名前は明かされていない)は教会が鍛えあげた最強の戦士にして、悪魔たちのトップに君臨するサタンをも倒せるとされる人類の希望なのです。実際、劇中でも七つの大罪を司る魔王たちと単独で渡り合った描写があるのは、この少年だけです。
聖書を詠唱することで引き出す力は圧巻の一言。作画のフカヤマますく先生による見開きは、読者をも飲み込むような迫力を感じさせます。
原作は有馬あるま先生、作画はフカヤマますく先生がそれぞれ務めています。
両先生ともに詳しい経歴はわかりませんでしたが、フカヤマ先生はpixivのアカウントがあったため、そちらに触れていきたいと思います。
こちらは『エクソシストを堕とせない』の連載から10年前の作品ですが、セピアがかかった温かみのある作画はデビュー前から好評だったようです。
調べてみると、ジャンプSQに読み切りが載ったことが何度かあるようでジャンプとはその頃からの付き合いの模様。(ちなみに当時はマス久というペンネームだったようです)
『エクソシストを堕とせない』というタイトルからわかる通り、この作品はある人物がエクソシストである少年を堕とすことを目的としています。
ここから先は重要なネタバレとなりますが、
実はヒロインである愛月イムリはサタンからの命令で少年エクソシストを堕落させにきた悪魔なのです。イムリは初めこそ「少年が気に入らなかったら逃げよ」などと思っていましたが、次第に自分を守ろうと命をかける少年に惹かれていきます。
少年もイムリと過ごす日々の中に安らぎを見出し始め「戦いよりキッチンに立っている方が好きだ」という本音を吐露する場面も。幼少期から虐待紛いの訓練を受けさせられた心の傷に加え、さらに少年は魔王軍との戦いで身体の一部を欠損しています。最強のエクソシストとはいえ心身ともに疲弊していたのです。
もしもエクソシストたる少年が悪魔の少女と恋に落ちたら。
確かに人類は魔王たちとの戦いに敗れるでしょう。しかし、それは少年を縛りつけていた過酷な運命からの開放と解釈することもできるのです。
少年神父とイムリの二人からとにかく目が離せない作品です。
二人はどうなるのか。イムリの真実を知った少年の選択は? 少年は魔王の策略に嵌ってしまうのか。
それとも乗り越えるのか。容赦なく人が死んでいく描写もあるため、悪い方向にも想像できてしまうところがポイントなんです。
でも一読者として私は、二人が結ばれ魔王を打ち倒す。そんなご都合主義溢れるハッピーエンドに祈りを捧げたいと思います。